感染後咳嗽の診療

感染後咳嗽の診療

風邪のあとの長引く咳・専門的な診断と治療

「風邪の熱やのどの痛みは治ったのに、咳だけがしつこく残っている」
そのようなお悩みで受診される患者様の多くが、この「感染後咳嗽(かぜ症候群後咳嗽)」に該当します。
当院では、咳が長引く原因を的確に診断し、つらい症状を早期に改善するための専門的な治療を行っています。

感染後咳嗽とは?

ウイルスや細菌による風邪(急性上気道炎)に罹患した後、他の症状は改善したにもかかわらず、咳だけが3週間以上続く状態を指します。 気道の粘膜が感染によってダメージを受け、少しの刺激(冷たい空気、会話、ホコリなど)に対して非常に過敏になっているために起こります。

基本的には自然に軽快する傾向がありますが、咳が長く続くと体力を消耗し、睡眠不足や胸痛を引き起こすなど、日常生活(QOL)を大きく低下させます。そのため、適切なお薬で咳を和らげることが重要です。

感染後咳嗽の診断基準

「長引く咳=感染後咳嗽」とすぐに診断できるわけではありません。咳喘息やマイコプラズマ感染症など、別の病気が隠れていないかをしっかりと除外(鑑別)することが最も重要です。

📋 感染後咳嗽の診断基準(以下の1~4をすべて満たす)
  1. 先行する感染症: かぜ症候群(発熱、鼻汁、咽頭痛など)や気道感染が先行し、咳が3週間以上持続している。
  2. 画像所見なし: 胸部X線(レントゲン)やCT検査で、咳の原因となる異常(肺炎や結核など)が認められない。
  3. 他疾患の除外: 咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流、副鼻腔炎、降圧薬(ACE阻害薬)の副作用など、他の慢性咳嗽の原因がない。
  4. お薬の有効性: 特異的ではない咳嗽治療薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬、麦門冬湯など)を使用すると咳が改善する。
【参考・出典元】
・Poe RH, et al. : Chronic persistent cough. Experience in diagnosis and outcome using an anatomic diagnostic protocol. Chest 95 : 723―728, 1989.
・藤森 勝也, 菊地 利明:感染後咳嗽(かぜ症候群後咳嗽).日本内科学会雑誌 109 : 2109―2115, 2020.

感染後咳嗽の治療方針(お薬の有効性)

感染後咳嗽は、咳喘息などとは有効なお薬が異なります。市販の咳止めや、一般的な喘息の薬(気管支拡張薬)が効かないのが特徴です。当院では専門的知見に基づき、以下の有効性が確認されているお薬を組み合わせて処方します。

お薬の種類 有効性 解説・特徴
麦門冬湯
(ばくもんどうとう / 漢方薬)
〇 有効 気道を潤し、過敏になった気道粘膜を鎮める漢方薬です。非常に効果が高く、よく処方されます。
ヒスタミンH1受容体拮抗薬
(アレルギー用薬)
〇 有効 かぜによる気道炎症で生じた物質を抑え、咳反射を和らげます。
中枢性鎮咳薬
(いわゆる「咳止め薬」)
〇 有効 咳中枢に働きかけて咳を止めます。※依存性などの観点から「短期間の使用」に限られます。
P2X3受容体拮抗薬
(リフヌア等)
〇 有効 気道の感覚神経の過敏性を抑える新しいお薬です。他の治療で改善しない難治性の咳に対して用いられます。
吸入気管支拡張薬
(β2刺激薬)
× 無効 喘息や咳喘息にはよく効きますが、感染後咳嗽には効果がありません。

※上記以外に、ステロイド内服薬の短期間使用が有効であるという報告や、気道過敏性を抑える吸入抗コリン薬が用いられることもあります。(吸入ステロイド薬については、有効とする報告と無効とする報告が混在しています)

【参考・出典元】
・藤森 勝也,他:通常の鎮咳薬で改善せず,麦門冬湯が有効であったpostinfectious chronic coughの1例.アレルギー 44 : 1418―1421, 1995.
満屋奨医師

記事監修

満屋 奨(みつや しょう)

呼吸器内科専門医・内科専門医
大阪医科薬科大学 呼吸器内科・呼吸器腫瘍内科
ラジオロジークリニック扇町 呼吸器専門外来 担当医