喘息の診療

喘息の診療

ガイドラインに基づく適切な分類と治療

当院では、長引く咳や息苦しさの原因となる「喘息」の専門的な診断と治療を行っています。
一口に喘息といっても、症状の出方によっていくつかのタイプに分類されます。2025年度の『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン』に基づき、患者様お一人おひとりの状態を正確に見極め、最適な治療を提供します。

喘息の3つの分類(ガイドライン準拠)

喘息は症状の出方(特に咳や喘鳴の有無)によって、主に以下の3つに分類されます。

1. 典型的喘息

喘息の三主徴と呼ばれる「咳」「喘鳴(ヒューヒュー、ゼイゼイといった音)」「呼吸困難」のうち、主に喘鳴と呼吸困難を呈する一般的な喘息です。アレルギー体質の方に多く、大人になってから発症することも珍しくありません。

2. 咳優位型喘息

咳を主な症状とする喘息です。臨床的な特徴としては、典型的喘息と後述する咳喘息の「中間的」な性質を持ちます。喘鳴は目立たないものの、気道の炎症が起きており治療が必要です。

3. 咳喘息

自覚的にも他覚的(医師の聴診など)にも喘鳴や呼吸困難を認めず、「咳だけ」を呈する喘息です。夜間や明け方に悪化しやすく、冷たい空気や会話をきっかけに咳き込むことが多いのが特徴です。放置すると約30〜40%が典型的な気管支喘息に移行するとされています。

当院の検査・診断アプローチ

咳がひどい急性期には、大きく息を吸ったり吐いたりする一般的な呼吸機能検査(スパイロメトリー)は患者様にとって負担が大きく、実施が困難な場合があります。
当院では、お体に無理のない方法で正確に診断するための設備を整えています。

Mostgraph(モストグラフ)による負担のない検査

普段通りの自然な呼吸をするだけで、気道の状態(空気の通りやすさ)を3Dグラフで精密に評価できる機器です。苦しい思いをせず、喘息の早期兆候を発見できます。

CT検査による他疾患の除外(即日対応)

喘息と似た症状を引き起こす他の重大な肺疾患(NTMや間質性肺炎など)が隠れていないかを、高解像度CTで確実にチェックします。放射線診断専門医とのダブルチェック体制で見落としを防ぎます。

アレルギー血液検査・試験的治療

必要に応じて原因アレルゲンを特定する血液検査や、実際に吸入薬を使用してみて呼吸が楽になるかを確認する試験的治療を組み合わせて確定診断へと導きます。

咳喘息から典型的な喘息への移行を防ぐために

咳喘息を放置すると、約30〜40%の方が典型的な気管支喘息に移行してしまうことが報告されています。 しかし、診断された時点から吸入ステロイド薬(ICS)を使用することで、この移行率を低下させられることがわかっています。
(出典:日本呼吸器学会編『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2026』)

⚠ 典型的喘息へ移行しやすいリスク因子

  • 好酸球性の気道炎症がある
  • 気道過敏性(ちょっとした刺激で咳が出やすい)が強い
  • ダニやハウスダスト、ペットなどへのアレルギーがある
  • 呼吸機能検査で1秒量(FEV1)が低い

これらに当てはまる方は、特に早期からの吸入治療が重要です。

図: なぜ早期治療が大切なのか ― 気道の変化(イメージ)

気道の変化(正常な気道と炎症で狭くなった気道の比較)

喘息・咳喘息の治療の流れ

治療の基本は吸入薬です。飲み薬と違い、気道に直接届くため少ない量で効果を発揮し、全身への副作用が少ないのが大きなメリットです。

STEP 1

まずは「中用量ICS/LABA」で治療開始

炎症を抑える吸入ステロイド薬(ICS)と、気管支を広げる長時間作用型β2刺激薬(LABA)を合わせた吸入薬が基本治療です。1つの吸入器に2種類の薬が入っているため、毎日1〜2回の吸入で済みます。

STEP 2

2〜3ヵ月ごとに効果を確認

症状やモストグラフの結果をもとに治療効果を評価します。コントロール良好であればお薬を減らす(ステップダウン)方向を検討します。逆に改善が不十分な場合は、お薬の追加や吸入手技の見直しを行います。

STEP 3

治療開始から1〜2年で中止を検討

吸入ステロイドを最低用量まで減らしても症状がなければ、治療の中止を考慮できます。ただし再燃の可能性があるため、中止後も定期的な経過観察が大切です。
(出典:日本呼吸器学会編『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2026』)

吸入治療を成功させるポイント

吸入薬は正しい使い方で毎日続けることが何より大切です。処方開始から1年後に吸入を続けている方の割合は10〜20%程度にとどまるという報告もあり、「症状が落ち着いたからもういいかな」と自己判断で中止してしまうことが、悪化や再燃の大きな原因になっています。
(出典:日本アレルギー学会編『喘息予防・管理ガイドライン 2024 (JGL2024)』)

正しい吸入手技

正しい吸入手技

吸入器の種類によって吸い方が異なります。当院では正しい吸い方を丁寧にご指導します。

毎日の継続

毎日の継続

「調子が良い=治った」ではありません。気道の炎症は症状がなくてもくすぶっていることがあります。

定期的な通院

定期的な通院

2〜3ヵ月ごとに検査で確認しながら、お薬を調整していくことが寛解への近道です。

図: 吸入デバイスの種類と選び方

吸入デバイスの種類と選び方

出典: 日本アレルギー学会編『喘息予防・管理ガイドライン 2024 (JGL2024)』

満屋奨医師

記事監修

満屋 奨(みつや しょう)

呼吸器内科専門医・内科専門医
大阪医科薬科大学 呼吸器内科・呼吸器腫瘍内科
ラジオロジークリニック扇町 呼吸器専門外来 担当医